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スタートアップアカデミー#3

起業家が知っておくべき、VCが投資する際の検討項目を教えます。

前回のスタートアップアカデミー#2|独立系VCが考える、起業家がVCを選ぶ上で絶対に押さえておくべきはこれだ!では、起業家が資金調達時にVCをどのような視点で見ればよいのかをご紹介しました。 今回は、VC側の視点に立ち、ベンチャー企業への投資を決定するまでにどのようなポイントをVCが検討しているのかをご紹介します。

まず前提として、検討対象とするベンチャーのステージによって、検討する項目やそれらの比重が大きく異なります。
例えば、シードのベンチャーでは経営陣を特に重要視します。プロダクトが未完成の場合が多く、ピボットの可能性もあり、経営陣の力が事業を大きく左右するからです。
アーリーステージでは経営陣に加えて、PMF (Product Market Fit) の検証など事業面の比重が高くなります。

スタートアップアカデミー#3 (出所)SPEEDA「ベンチャー企業の資金調達とVC」~一般的な国内VB(ベンチャー企業)の成長スピードとイメージ~

では、具体的にはどのようなポイントを見ているのでしょうか。
ここでは経営陣、業界、事業内容、バリュエーションの4つの観点に分けてご紹介します。

経営陣

経営陣、特にCEOは会社の顔であり、意思決定権を握っているため、レイターステージに至るまで最も重要視されることの多い項目です。

優秀なメンバーを集めてくる能力があるか
経営者とはいえ、会社を成長させていく中でCEO一人でできることには限界があります。そのため、いかに優秀な人を巻き込み、チームを形成することができるかが重要です。さらにIPOを目指すのであれば百人規模の組織をマネージする必要があります。人間としての魅力度やリーダーシップ、そしてそれを裏付ける実績があると説得力が増します。
困難を乗り越えられる論理的思考力があるか
大半のベンチャー企業は事業を拡大していく中でメンバーの離脱や方向性の変更のような様々な壁を乗り越えなくてはなりません。問題が発生したときに柔軟に代替案を施行するなど、改善のサイクルを回すことができる論理的思考力があるかも重要なポイントです。
本事業に強いパッション、コミットメントを持っているか
事業を継続して成長させるには困難が数多く生じるため、経営陣に事業への強い思いがなければ挫折してしまう恐れがあります。困難な状況に直面しても簡単にはあきらめない粘り強さや根性、そしてそれらを裏付けるパッションやコミットメントも重要視されます。
またVCの投資先としてIPOを目指すベンチャーが多く、CEOのIPOへの熱意も重要です。スモールイグジットを前提とする場合は投資決定が難しいと判断するケースも多いです。

上記3つの要素は相互に関連し合う要素ですが、いずれも非常に大切です。Angel Bridgeでは、経営陣に対して個別に話を聞いたり、CEOの前職の同期や既存投資家などにインタビューを行うことで、以上に挙げた事項について理解を深めています。

業界

VCは投資検討しているベンチャー企業が参入する市場をしっかりと把握する必要があります。経営陣や事業が魅力的でも参入市場が魅力的でなければ、会社の成長のアップサイドには限界があります。

市場規模が十分に大きいか
TAM (Total Addressable Market) の大きさが重要です。これはベンチャーが提供するサービスを使ってリーチできるターゲット層の最大の大きさ、つまり需要の大きさを表します。市場が十分に大きければ、成功した時の爆発力が見込めるだけでなく、競合がいても棲み分けて共存できる可能性があると言えます。
Angel Bridgeの投資先のミツモアを例としてご紹介します。ミツモアはローカルサービスを必要とする依頼者とローカルサービス事業者間のマッチングプラットフォームを提供しています。対象とする事業カテゴリが広範囲にわたっているため、集客手数料だけでも3兆円以上の巨大な市場となっています。
(参照:Angel Bridge投資の舞台裏#1 スタートアップアカデミー#2
市場が拡大しているか
市場自体が拡大している場合は、新規参入してシェアを奪えるチャンスがあります。
Angel Bridge投資先のLISUTOを例としてご紹介します。LISUTOはEC事業者向けに自動タグ付けツール「AIタッガー」を提供する会社です。コロナ禍における消費者行動の変化を背景にEC市場は急激に成長しており、今後もさらに拡大していくことが予想されています。BNPL (Buy Now Pay Later) をはじめとしたEC周辺領域はグローバルで見ても注目度が高く、数多くのメガベンチャーが誕生しています。非常に多くの資金が集まっているため様々な業態のサービスが生まれており、LISUTOにとって市場の拡大は大きな追い風となっています。
(参照:Angel Bridge投資の舞台裏#4
世間から注目されており政策等の追い風を受けている業界であるか
注目度の高い業界は資金が集まりやすく、マーケティングもしやすい傾向があります。特に医療系の事業では国が政策等で後押ししてくれることで大きな追い風を受ける場合が多いです。
例として、Angel Bridge投資先のVarinosは産婦人科領域の遺伝子分析サービスを提供しています。昨今ゲノム解析市場は盛り上がっていて、世界でメガベンチャーが多数生まれていますが、日本国内ではまだプレーヤーが少ないです。特に産婦人科領域は市場が大きく、世界的に見ても競合が少ない領域であるため、魅力的な市場となっています。国や自治体が不妊治療に助成金を提供したり、保険適用を開始していることが大きな後押しとなっています。
ベンチャーが取り組むべき領域であるか
市場を獲得するための大きな資金力や大型の設備投資が必要な事業は、ベンチャー企業にとって取り組むことが難しいです。市場を理解し、適切な領域を選択できているかが重要なポイントです。

特に 「1.市場規模が十分に大きいか」 で挙げた「市場規模が十分に大きいか」は重要です。市場規模が大きければ戦い方の選択肢も多く、社会に与えるインパクトも大きいため、メガベンチャーが産まれやすいと言えます。TAMの広がりだけでなく、コアターゲットとして現実的に捉えられるSOMの大きさをしっかり伝えることが必要です。

事業内容

特にアーリーステージでは事業開発がある程度進んでいる段階なので、その事業内容が優れているかどうかも重要視されます。

ペインが深く、適切にアプローチできているか
着目しているペインが深いことと、それを解決するための適切なアプローチが取れていることが非常に重要です。たとえ経営陣が強いパッションを持っていたとしても、取り組むペインが浅かったり、ニーズに応えることができていなかったりすれば、事業を拡大させることは難しいです。
競争優位性のコアが価値のあるものであるか
数多くの企業が生まれている中で市場を勝ち取り、リードする存在となるためには独自性や強みが必要です。競合他社と比較してサービスの優位性が十分にあるかという点や、参入障壁が大きく、他社が簡単に真似できない事業であるかという点を検討します。特にミドルからレイトステージのベンチャーにおいては重要視しています。
例えば、プラットフォームサービスは参入障壁を作りやすい領域と考えています。プラットフォームは事業者が集まれば集まるほどサービスの価値が上がり、ネットワーク効果が期待できるためです。
技術力が十分であるか
ディープテック等の技術系ベンチャーは技術の革新性や技術力の高さが必要とされます。実際にどのステージまでPoCが出来ているのか、技術がどのくらい独自性を持ち、稀有なものなのか等を検討します。そのためには特許や論文で実績が証明されていることが重要です。技術開発を中心とする大学発ベンチャーを成功に導くための秘訣をAngel Bridge業界研究#2にまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
スタートアップアカデミー#2

事業内容の中でも特に 「1.ペインが深く、適切にアプローチできているか」 で挙げたペインをしっかり捉えているかどうかが非常に重要です。誰のどんな課題を解決するサービスなのか、その課題がどれほど深刻なものなのかを明確にすることが重要です。Angel Bridgeではサービスのユーザーや業界の知見者にインタビューを行い、実際に利用に至った背景や利用後の満足度、業界におけるニーズの有無を調査しています。

バリュエーション

最後にバリュエーションについてです。類似企業の平均的な企業価値を元に事業計画の蓋然性を考慮してIPO時の価値を算出し、逆算して現在の価値を求めるケースが多いです。この値を元にリスクリターンのバランスが適切であるか検討します。希薄化や次のラウンド以降の設計も考慮し、高すぎず、安すぎないフェアバリューであることが重要です。

Angel Bridgeは「リターンに見合ったリスクは積極的にとる」というValueを掲げています。独自のRisk-Returnプロファイルに基づいて、爆発力のある案件に積極的に投資を行っています。メガベンチャーの可能性がある企業であれば成功確率が10%でも投資をし、成功率を高めるのが我々の役目でもあると考えています。

多くの企業の成長にコミットしてきた経験をもとに、全力でサポート致しますので事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!
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