Goals

Angel Bridge投資の舞台裏#8(株式会社Goals)

昨今急速に進められている店舗DX化。
飲食店の発注業務をAIで自動化するGoalsへ投資した理由とは。

2022.06.29

今回は、Angel Bridgeが飲食店向けの発注業務自動化サービスを提供する、株式会社Goalsへ投資した理由を解説します。

GoalsはAIで需要予測し自動発注を行う、クラウド型サービス「HANZO 自動発注」を提供しています。スマホ画面等で必要な食材が一目でわかる仕組みで、これまで手作業で行われていた飲食店舗での発注業務を自動化します。発注にかかわる時間や食材棚卸に要する時間の削減、結果として人材不足を補い、食材原価率も大幅に改善することができます。
Angel Bridge投資の舞台裏#8
昨今、新型コロナウイルス感染症流行の影響で急速なオンライン化や労働力不足が問題となり、多くの企業で積極的に店舗DX化(デジタルテクノロジーの導入)が進められています。特に飲食店の効率化ニーズは高く、今後市場ポテンシャルはさらに拡大していくことが想定されます。そのような状況の中で、店舗のオペレーションに沿った高い品質のプロダクトを提供するGoalsに可能性を感じ、投資に至りました。

では、Angel Bridgeが具体的にどのような検討を行ったかについてご紹介します。

飲食店の発注業務における課題

まず飲食店の発注業務がどのように行われているのかご説明します。

発注業務には大きく分けて4つのプロセスがあります。

需要予測
過去データなどを基に今後数日間の各メニューの販売数、必要な各食材量を予測し、適正在庫を計算します。
在庫確認
冷蔵庫やストックスペースの食材を全てカウントし、適正在庫と比較して在庫の過多や過小なものがないか、食材の品質が大丈夫か、期限切れを起こしているものがないかなどを確認します。
卸会社ごとの発注量決定
食材ごとに卸先が異なるため、それぞれの発注条件を確認します。例えば、発注から納品までのリードタイムを把握する作業や1個単位なのか10個単位なのか、もしくはグラム単位なのかといった発注単位の確認作業があります。
発注システム入力
決定した発注量を食材ごとにシステムに入力します。

これらの作業は欠品を起こさず適正な食材原価率を維持するために、非常に重要な作業であり、飲食店では毎日多ければ1時間以上かけて実施されていますが、全てアナログな手作業で行われており、需要予測については店長など発注担当者の勘に委ねられている場合が多い現状があります。

そのため発注業務は作業負荷が大きくミスが生じやすいうえ、人材確保の面でも店舗拡大のボトルネックとなっています。
具体的には下図のように、過剰発注により食材の原価率が悪化してしまうことや、店長など熟練者のスキルに一任しているため人材確保が困難であることが大きな課題となっています。
飲食店の発注業務における課題
GoalsではAIによる需要予測と在庫量計算や発注表作成の自動化により、これらのペインを解消するサービスを提供しています。

サービス概要

では、Goalsの提供するサービス内容をご紹介します。

Goalsは自動発注システムHANZOを開発しています。
これまでの発注作業とHANZOでの大きな違いは、人間が手作業で行っていた業務を極限まで自動化し、最終確認のみ人の目で行うという点です。
サービス概要
在庫確認、売上・消費食材の需要予測はすべてAIが行い、メニューの提供数やロスの情報から、残存している在庫量と必要在庫量を自動計算します。卸会社ごとに発注表の案を自動で生成でき、必要に応じて微調整するだけで発注作業が完了するという仕組みです。

これにより、店舗側では発注時間の大幅な削減や発注担当者の労働環境の改善が実現したうえ、会社としても利益率改善や人材不足問題の解消による事業拡大につながっています。実際に多くのユーザーからは予測精度の高さ、他システムとの連携といった点で高い評価を得ています。

さらにHANZOは飲食店の店舗オペレーションに即した細やかな機能開発を行うことで、現場の使い勝手の良いサービスを作り上げています。

①売上予測の自動化
売上予測・消費量予測表の作成
②適正発注案の自動作成
在庫量・売上予測を計算し、発注表を自動作成
確定情報を発注システムに連携
③異常値アラート
過剰・過小発注、発注漏れなどのアラート
④ロス等報告機能
ロス・在庫切れ・小口購買を店舗スタッフが入力報告できる機能(より高い発注精度にも繋がる)
⑤売上予測手修正機能
店舗の現場しか知り得ない需要変動要素も加味し、手修正が可能
⑥納品スケジュール自動計算
仕入れ先の休業日や納品リードタイムを全て加味し最適な納品スケジュールを算出

競合

Goalsの競合についてです。

飲食向け自動発注システムには、自社のネットワーク内で利用するオンプレミス型と、インターネット接続ができる環境であればどこでも利用できるクラウド型の2種類あります。

オンプレミス型の自動発注は多数存在しますが、クラウド型はGoalsが唯一です。オンプレミス型は自社サーバー内でのシステム構築を行うため、導入コストが高いのに比べ、クラウド型は低コストで導入でき、使い勝手が良いというメリットがあります。

さらに需要予測を組み込んだ高度な仕組みは、システムに数億円の投資を行う一部のトップ企業でしか実現できていませんでしたが、Goalsのサービス利用者に最新の機能を提供できるため競争優位であると考えています。

実際に業界を牽引する大手飲食チェーン店での導入実績が多数あり、プロダクトの信頼性が伺えます。

経営陣

投資するにあたり、経営陣の皆様への理解も深めました。

  • 佐崎傑 Goals代表取締役CEO
  • 佐崎傑代表取締役CEOワークスアプリケーションズに新卒入社し、ソフトウェアエンジニア・事業責任者を経験。 同社で各業界リーディングカンパニーのバックエンド業務の改善に携わる中で、企業の仕入・製造・販売を司るサプライチェーン領域の課題解決が日本社会を大きく成長させる可能性を感じ、2018年7月にGoalsを創業。
  • 多田裕介 Goals共同創業者、 CTO
  • 多田裕介Goals共同創業者、 CTOサム・ヒューストン州立大学にてコンピュータサイエンスを専攻。ワークスアプリケーションズからフリークアウト転職後、複数の新規事業立ち上げに参画。2018年7月に、CEO佐崎とGoalsを共同創業し、CTOとしてプロダクト開発全般と新規プロダクトの立ち上げを担当する。

代表取締役の佐崎氏は元々ワークスアプリケーションズ社でエンジニアとして活躍し、最年少のDivision Managerとして数百名の組織を統括したエース社員でした。「産業に深く関わり、明確な価値を提供できるプロダクトを作りたい」という思いから創業しました。
面談を重ねていく中で、ロジカルな思考と強力なやりきり力でチームからの尊敬も熱く、強いリーダーシップの持ち主であることが感じられました。

共同創業の多田CTOは大学時代にコンピューターサイエンスを専攻しており、佐崎氏とは前職から一緒に働いていました。周囲からは「2人には阿吽の呼吸を感じる」といった声も挙がるほどで、強いチームを作っています。

おわりに

最後に、今後の展望ついてご紹介します。

現在は自動発注以外にも、45日先の売上予測や従業員の必要時間を算出する「HANZO 売上予測」など人件費や原価の最適化を実現するさまざまなラインアップを備えています。
ここからより外食企業の商流全体の課題解決を目指すため、原価・人件費・販売の最適化へ向けてプロダクトの強化を図ります。

中長期展開としては、外食企業の食材需要データを用いて食品流通の在庫・物流計画の最適化、食品製造の生産計画の最適化などに対応するプロダクト開発を進め、食品産業全体の生産性向上に貢献できると考えています。

以上のようなプロダクト戦略によって、Goalsがメガベンチャーになる可能性はさらに高くなると考えられます。

これまでGoalsへの投資に至った理由を説明してきましたが、このように社会に大きなインパクトをもたらすために、難しい領域に果敢に取り組むベンチャーをAngel Bridgeは全力で応援していきます!事業や資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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