日本ハイドロパウテック株式会社

Angel Bridge投資の舞台裏#9(日本ハイドロパウテック株式会社)

様々な社会課題を解決することが期待されるフードテック。
「合成樹脂押出技術」を食品加工に応用したフードテック企業、日本ハイドロパウテック株式会社に投資した理由。

2023.02.01

2023年1月6日、Angel Bridgeの投資先である日本ハイドロパウテック株式会社(以下NHP)ロッテとの資本業務提携を締結したというプレスリリースが発表されました。

今回は、Angel Bridgeが合成樹脂押出技術を食品加工に応用したフードテック企業であるNHPへ投資した理由を解説します。

盛り上がるフードテック市場

盛り上がるフードテック市場

(出典:経済産業省「フードテック振興のアイデア」)

現在、フードテック市場は成長し続けています。経産省によると世界のフードテック市場規模は、24兆円(2020年)から279兆円(2050年)と30年間で10倍以上に急拡大する見込みです。領域も代替肉や昆虫食、陸上養殖、植物工場など多岐にわたります。

この市場急成長の背景としては、食料不足や健康・栄養問題、食料生産による環境問題などのグローバルな社会課題の顕在化があります。これらの課題を解決できる産業としてフードテックが期待されています。

盛り上がるフードテック市場 (出典:2022 AgFunder AgriFoodTech Investment Report)
盛り上がるフードテック市場
盛り上がるフードテック市場

例えば海外では代替肉を開発するBEYOND MEATが評価額$1.4B、代替乳製品を開発するOatlyが評価額$10BでIPOしました。日本国内においても近年はIPOはないものの資金調達は活発化しています。

NHPが事業展開するフードテック市場が巨大かつ今後も成長し続ける可能性が高いという点は彼らに投資を決めた背景の1つです。

NHP事業概要

NHPはCEOである熊澤氏がダイセル化学工業(現(株)ダイセル)で習得した合樹押出技術を食品加工に応用した加水分解技術をもとに事業化した会社です。当初は米を原料とした加水分解物の製造受託を中心に取り組んでいましたが、更なる高付加価値化を目指し、高単価なチョコレートや昆虫食、バイオエタノール等を新たな事業の柱と位置づけてフードテック領域に本格参入しました。

NHP事業概要

合樹押出技術はプラスチックなどの着色、コンパウンドを製造する際に使用される技術であり、食品業界ではスナックの製造に使用されています。押出機内で加水分解を安定的に起こすためには材料に応じてスクリュー形状の変更や温度調整などを行う必要があるため、高いレベルでの知識・ノウハウが要求されます。NHPではCEO熊澤氏とCTO中林氏の高い技術力により、合樹押出技術の食品業界への応用を実現しました。

NHP事業概要

NHPの製法は従来の加水分解製法と違い、高粘度の原料を低い酸素濃度、高温、高圧で剪断加工を行うので、原材料が分子レベルで分解し、炭化もしません。これによって従来よりも効率的に、また高品質な食品を製造することができます。さらに製造の際の環境への負荷も少なくなっています。特に、高品質なチョコレートや昆虫食を作るための技術(無菌化・微細化)が備わっている点は他社との明確な差別点となっています。

他企業との共同開発・業務提携

他企業との共同開発・業務提携

チョコレート・昆虫食・バイオエタノールを事業の柱にしていくにあたり、NHPは各領域でパートナリングを行い、共同研究開発や販路拡大を推進しています。

チョコレート領域ではロッテと資本業務提携契約を締結したことが発表されました。ロッテは現在、サスティナビリティに向けた取り組みに力を入れており、「DO Cacao chocolate」という新ブランドの立ち上げやチョコレート会社の買収など積極的に活動しています。NHPの加水分解技術とロッテの資本力・開発力が合わさることで、さらにチョコレート事業が加速していくことが予想されます。

他にも昆虫食領域では同じくフードテック企業であるエコロギー社との業務提携契約を締結して製造を受託していたり、バイオエタノール領域ではGreen Earth Institute社と業務提携を結び、成長が著しいSAF市場で国産SAFの商用化に向けた取り組みに貢献していたりします。

このように様々な領域でリーディングカンパニーと提携できていることが、NHPの技術力の高さや業界内での評価の高さを表しています。

経営陣

投資を検討するにあたって、経営陣への理解も深めました。

経営陣

CEOの熊澤氏は、ダイセル化学工業で10年以上合樹押出技術についての知識/ノウハウを蓄積し、さらにそれを食品加工に応用するという革新的なアイデアを持った優秀な経営者です。面談を重ねていく中でIPOへの強い思い、そして自身の技術への強い自負が感じられました。

CTOの中林氏も熊澤氏と同じくダイセル化学工業出身です。機械設備導入や工場のオペレーションの指揮を行っています。機械に関する高い知見と経験を持っており、製造のプロフェッショナルとしてNHPを支えています。

COOの杉村氏は証券会社・コンサルティング会社出身のビジネスマンです。ベンチャー企業や新規事業開発支援の経験が長く、事業開発のプロフェッショナルとしてNHPにコミットしています。

このように、革新的なアイデアを持つ熊澤CEOとそれを実現できる優秀でバランスのとれた経営陣で、事業を力強く推進できる点がNHPに投資する理由の1つとなりました。

おわりに

ここまでNHPへの投資理由について解説しました。まとめるとNHPの魅力的な点としては(成長する巨大市場)×(革新的な技術)×(優秀な経営陣)の3点が挙げられ、メガベンチャーになる要素が詰まっていると考えています。今後は海外市場への参入や自社ブランド商品の開発などを目指しており、さらなる成長が期待できます。

Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、難しいことに果敢に取り組むベンチャーを応援していきたいと考えています!事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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